先日、あるお店に行くと、
店中に響き渡る赤ちゃんの泣き声が聞こえました。
声の方を見ると、ベビーカーの上で大声で泣いている男の子と、
店員さんに注文をしているママの姿がありました。
男の子は、生後6~7ヵ月くらいのように見えました。じぃーっとママの顔を見つめ、
ぽろぽろと大粒の涙を流して、大声で訴えるように泣く姿からは、
切なささえ伝わってきました。
ママは、どうしても必要な物を購入していたのでしょう。
子どもさんの顔を見ることも話しかけることもなく、
店員さんと話を進めていました。
もしかしたら、切なそうに自分を見上げる我が子を見ることがつらいために、
わざと見ないようにしていたのかもしれません。
子どもが大泣きしてしまって、ママも泣きたい気分だったかもしれません。
赤ちゃんの訴えに反応しないことを繰り返すと、
過剰に訴えるようになります。
それに反応してもらえなかったり、拒否されたりした場合、
訴えることをしなくなります。
一時的に、おとなしくなった、育てやすくなったと感じる場合もあると思います。
しかし、「訴えても受け入れてもらえない」と思った場合、
ママとの間に満足のできる関係を築くことができず、
『心の安全基地』も形成されません。
すると、好奇心や意欲をなくしたり、自己肯定感が低くなったりします。
他の人とコミュニケーションを取る能力が育ちにくくなります。
その後、
学校へ行くようになってから、
「やる気がない」
「友だちと上手く関わることができない」
などといったことが問題になりがちです。
教員をしていた頃、
子どもたちの生活や学習の様子を見ていて、
幼い頃にどんな環境で育ったか察しがつくことがありました。
親御さんが悪いわけではありません。
子供のためによかれと思ってやったことが、
望む結果に繋がらないこともあります。
大抵の方は、ストレスを抱えながら、精一杯のことをしています。
人は一生発達しますし、
自分が気付くことができれば、一瞬で変容を遂げることもあります。
でも、能力を学習するのに適した(ピークとなる)時期がありますので、
そのような時期に適切な接し方をすることで、
子どもが楽に生きることができるようになります。
子どもの幸せ、親子の幸せに繋がります。
小学校1年生の担任を7回ほどしたことがありますが、
小学校に入学した時点で、
子どもたちの意欲や発達にかなりの差があり、
幼い頃の接し方や過ごし方が原因となっていることが多くあると感じていました。
そして、その差を縮めることは、非常に困難なことでした。
教員は、教育のプロなんだから、
親御さんのせいにするのではなく、
その時にできる最大限の努力をしようと思って子どもたちと接してきましたが、
子どもたちの幸せのためには、
親御さんから子育ての不安を取り除き、
子育てのために役立つ情報を伝えてくれる人が地域にいてくれたら…
とよく思ったものです。
あの頃の思いが、今の子育てアドバイザーとしての活動に繋がっています。
もし、お店で会ったママの立場だったら、どうするかを考えてみますと…。
「ママ、どうしても○○を注文したいから、お店の人とお話をしないといけないの。
だから、待っててね」
などと、子どもに前もって事情を説明しておく。
(どんなに小さくても、言葉が分からなくても、子どもには伝わります)
時間が長くなってしまったりして、子どもがぐずってしまったら、
「長く待たせて、ごめんね。急ぐからね」
などと声をかける。
あるいは、抱っこして、
「○○くん、これいいでしょう?」
「ママね、これ気にいったんだよ」
などと、会話の中に子どもを巻き込む。
そして、後で、ギュッと抱っこして、
「ありがとうね。おかげで、ママ、欲しいものを買うことができたよ」
などとお礼を言う。もちろん、笑顔で。
子どもは、大好きなママが喜ぶと、
自分が役に立てるんだ~と思い、
少しずつ自分をコントロールできるようになっていきます。