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教員時代の記憶から(3)~いじめる“理由”~

新学期が始まってからしばらくして、

教室へ入る時の雰囲気やふとした時に見かける子どもたちの様子から、

「教員に気づかれないようにしていることがある」

と感じ始めました。

 

話しかけてくる笑顔にも、違和感を感じました。

 

そのうち、

一人の子に対して強く非難したり、

関わることを嫌がったりしているということが分かってきました。

 

他の子たちと話をしているときなどにも、

どんなことが起きているのか、

その子たちの様子を見たり、感じたりするようにしました。

 

そして、

関係のない子たちにも、さり気なく尋ねてみました。

 

すると、

驚きの言葉が…

 

「昨年は、あの子の首をロープで絞めたんだよ」

 ・・・・・・・  

  

これはもう、すぐにでも対処しないと、

大事になってからでは遅いと思い、

子どもたちと話をすることにしました。

 

この子たちのやっていることはよくないことだけれど、

一方的に〝指導〟をするだけでは、

絶対に解決しないことだという思いが私の中にありました。

 

そして、

いわゆる〝いじめ〟が起きている時は、

原因がいじめられている子にあるとは思いませんが、

他の子たちもいる中で、

その子だけがいじめられているという現実があるわけですから、

 

いじめている子たちにとって、

何か〝理由〟があるはずだと思っていました。

ですから、その理由を知りたいと思いました。

 

そこで、

授業後、子どもたちと一緒に床に座り、

これまでに見たことを伝え、

相手の子のことで許せないことがあるのかを尋ねました。

 

最初は頑なだった子どもたちが、

少しずつ話を始めました。

 

この時は、

相手の子が鼻水を洋服の袖や手で拭ったり、

鼻をほじったりするのを見ると、

気持ちが悪くなる。

 

その手で配布物や自分の持ち物に触れられると、

すごく嫌で、イライラする

ということが〝理由〟でした。

 

そして、

やめて欲しいと伝えても、

相手の子が全くやめる気がないように見えたため、

酷いことを言ったり、したりすることが増えていった

とのことでした。

 

その子たちの気持ちに共感した上で、

鼻水が出やすい子もいるし、

本人が意識しないでしているために、

やめることがとても難しいこともある

などといったことを伝えました。

 

子どもたちは、

私の話をとても真剣に聞き、

相手の子が、やめるよう努力するなら、

すぐにはやめられないとしても、

もうこれまでのようなことはしない

と約束しました。

 

その後、

相手の子とも話をしたところ、

お互いに納得できた様子で、

関係が改善されていったように見えました。

 

子どもたちの笑顔も増えました。

 

その場だけをおさめようとすると、

問題が繰り返されたり、大きくなったりしますから、

双方の言うことをよく聞き、

子どもたちの心にひっかかっていることを浮上させ、

お互いに気持ちよく過ごすために何が必要かを

子どもたちと一緒に考えていくことで状況を改善することができます。

 

そのためには、

教員がアンテナを高くして、

子どもたちの中で起きていることをキャッチしなければなりません。

 

そして、

時間と根気が必要です。

 

教員は、

授業をはじめとした子どもと関わること以外の仕事を

かなりたくさん抱えていますので、

時間の確保が大きな問題になりますし、

ゆとりを持った対応をすることが難しい状況が多くあります。

 

学校が、

子どもたちが、自分の価値を見出し、

ゆったりと、楽しく 、

それぞれの子の才能を伸ばす場になることを願っています。