私は、数年前まで、童謡の『かなりや』を最後まで歌ったことがありませんでした。
そして、歌詞を理解しながら聴いたこともありませんでした。
最初の部分の「歌を忘れたカナリヤは うしろの山に捨てましょうか」
という歌詞を聴いただけで、
怖い歌だと思ってしまっていました。
教員になって数年経った頃、声帯ポリープを患い、
その後、十数年間、全く歌うことができない期間がありました。
その頃、この曲が流れているのを聞くと、
「“歌を忘れたかなりや”は、まさに私のことだ」と思い、とても悲しくなったものです。
そして、最後まで聴き続けることができませんでした。
でも、ある時、
童謡は、大正時代に当時の一流の文学者や詩人たちが、
「子供等の美しい空想や純な情緒を傷つけないでこれを優しく育むような歌と曲」
を与えようと立ち上がって作られたものということを知りました。
そうであれば、怖い歌であるはずがない、
本当は愛にあふれる歌なのではないかと思い、
最後まで聴いてみると・・・
やはり、優しく愛に満ちた歌でした。
この歌が大好きになりました。
この歌を歌うたびに思います。
大人も同じですが、特に子供たちには、
何かができるとかできないとかではなく、
ただ生きているだけで、誰もが価値のある存在なんだよ
ということを伝えてあげることが一番大切なのではないかなと・・・。
作詞をした西條八十氏は、「蘇州夜曲」「青い山脈」をはじめ、
数々のヒット曲を生み出された方ですが、
この曲の作詞をした頃は、家庭の事情のため、日々の生活に追われ、
詩をつくることを仕事にしたいと願いながらも、
実現することができずにいた時期だそうです。